監督・脚本:河邑厚徳(『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』)
出演:笹本恒子、むのたけじ
語り:谷原章介
音楽:加古隆
プロデューサー:平形則安
撮影:中野英世
海老根務
編集:荊尾明子
音楽監督:尾上政幸
製作:ピクチャーズネットワーク株式会社
日本初の女性報道写真家と伝説のジャーナリスト。
女と男。カメラとペン。
二人の生き方を見つめた
希望のドキュメンタリー映画
2014年4月。まもなく100歳を迎える二人が対面するシーンから始まる。同じ時代を生きてきた、笹本恒子とむのたけじ。笹本は日本初の女性報道写真家であり、むのは孤高にして伝説のジャーナリストだ。その日、出会いの記念にと笹本が赤いバラを贈ると、むのは「赤いバラが好き。いのちを表す花だ」と目を輝かせて笑った。そしてカメラは、100歳を超えてなお現役で活躍する二人の、いのちの輝きとその秘訣に深く迫っていく。
監督は、NHKのディレクターとしてドキュメンタリー番組「がん宣告」「シルクロード」「チベット死者の書」などで数々の賞を受賞、大ヒット作『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』で知られる河邑厚徳。本作では、むののペンと笹本の写真を交錯させながら、二人の証言を通して激しく揺れ動いた時代の人間ドラマを描きだした。
笹本は「今も現在進行形」と語り、むのは「今が人生のテッペン」と語る。二人に共通するのは、フリーランスとして独自の道を歩み、日本特有の狭い価値観からは距離を置いてきた姿勢。そして、人々の日常に寄り添う血の通ったものの見方。100年の歳月をしなやかに生き抜き、笑いながら終えようとする二人には、学ぶべき自由な生き方が詰まっている。そのライフスタイルは、人生100年時代、世界のどこよりも早く超高齢社会を迎える日本で、老いをどう生き抜くか考える人を励まし、希望を届けてくれるだろう。
笹本恒子
(ささもと・つねこ)
1914年9月1日東京生まれ。日本初の女性報道写真家。日独伊三国同盟から60年安保闘争など、戦中・戦後の歴史の節目に立ち会い、徳富蘇峰、加藤シヅエ、三笠宮ご一家、浅沼稲次郎、力道山ら昭和史を彩る人々にもカメラを向けた。一時期、写真の世界から遠ざかるも71歳にして活動を再開。以後、明治生まれの女性たちを題材に撮影を続け、日本女性史を膨大な息吹あふれる写真として表現。宇野千代、壺井栄、杉村春子、沢村貞子ら「明治生まれの女性たち」シリーズは笹本の代表作となった。102歳の今も現役フォトジャーナリストとして活躍中。
『フラワーデザイン教室』(1967年/鶴書房)
『ふだん着の肖像 昭和20-30年を彩った100人』(1988年/新潮社)
『ライカでショット!お嬢さんカメラマンの昭和のスナップ』(1989年/鎌倉書房)
『昭和・あの時・あの人』(1990年/TBSブリタニカ)
『輝く明治の女たち “いま”に生きる45人の肖像』(1992年/NHK出版)
『きらめいて生きる 明治の女性たち』(1996年/清流出版)
『素顔の三岸節子』(1998年/光村印刷・自費出版)
『夢紡ぐ人びと 一隅を照らす18人』(2002年/清流出版)
『昭和を彩る人びと 私の宝石箱(アルバム)の中から100人』(2003年/清流出版)
『好奇心ガール いま97歳 現役写真家が語る幸せな長生きのヒント』(2011年/小学館)
『97歳の幸福論。ひとりで楽しく暮らす5つの秘訣』(2012年/講談社)
『お待ちになって、元帥閣下』(2012年/毎日新聞社)
『恒子の昭和 日本初の女性報道写真家が撮影した人と出来事』(2012年/小学館)
『笹本恒子の「わたくしの大好き」101』(2013年/宝島社)
『はつらつ!恒子さん98歳、久子さん95歳 楽しみのおすそ分け』(2013年/清流出版・共著)
『99歳、現在進行形ね。楽しく生きる心がけをお話しします。』(2013年/小学館)
『100歳のファインダー』(2014年/東京新聞)
『ライカでショット!私が歩んだ道と時代』(2014年/新潮社)
『100歳の幸福論。ひとりで楽しく暮らす5つの秘訣』(2014年/講談社)
『好奇心ガール いま101歳 現役写真家が語る幸せな長生きのヒント』(2015年/小学館)
むのたけじ
1915年1月2日秋田生まれ。新聞記者として戦前・戦後を生き抜き、足早に通り過ぎる時代を記事にし、幅広い発言を残した伝説のジャーナリスト。中国・東南アジア特派員として戦地を取材するも、1945年8月15日、戦争協力の記事を書いた責任を感じて新聞社を辞め、その後ふるさとの秋田県横手に戻り、週刊新聞「たいまつ」を発行。戦後の激動の中でも自由を旗印にジャーナリストとしての矜持を貫き、若い世代に向け平和を訴えた。2016年8月、101歳で死去。マスコミだけでなく、若者から老人までの多くの市民が深い哀悼の意を表した。
『たいまつ十六年』(1963年/企画通信社、1964年/理論社、1994年/社会思想社、2010年/岩波現代文庫)
『雪と足と』(1964年/文藝春秋新社、1970年/三省堂ブックス)
『踏まれ石の返書』(1965年/文藝春秋新社、1983年/評論社)
『ボロを旗として』(1966年/番町書房、2003年/イズミヤ出版)
『日本の教師にうったえる』(1967年/明治図書)
『詞集たいまつ――人間に関する断章604』(1967年/三省堂新書)
『明日への絶唱――理想と情熱』(1967年/三一書房)
『1968年―歩み出すための素材』(1968年/三省堂新書)
『日本の教育を考える―豊かな人間教育への提言』(1970年/東芝教育技法研究会)
『解放への十字路』(1973年/評論社)
『われ住むところわが都』(1975年/家の光協会)
『詞集たいまつⅠ』(1976年/評論社)
『詞集たいまつⅡ』(1976年/評論社)
『詞集たいまつⅢ』(1988年/評論社)
『詞集たいまつ』(1997年/評論社)
『詞集たいまつⅣ』(2002年/評論社)
『むのたけじ 現代を斬る』(2003年/イズミヤ出版)
『戦争いらぬやれぬ世へ』(2007年/評論社)
『詞集たいまつⅤ』(2007年/評論社)
『戦争絶滅へ、人間復活へ――九三歳ジャーナリストの発言』(2008年/聞き手・黒岩比佐子/岩波新書)
『いのち守りつなぐ世へ』(2008年/評論社)
『詞集たいまつⅥ』(2011年/評論社)
『ふみさん、たけじさんの93歳対談』(2008年/朝日新聞出版)
『希望は絶望のど真ん中に』(2011年/岩波新書)
『人類の新しい夜明けを』(2014年/クレヨンハウス・ブックレット)
『99歳一日一言』(2013年/岩波新書)
『日本で100年、生きてきて』(2015年/聞き手・木瀬公二/朝日新書)
『100歳のジャーナリストからきみへ(シリーズ5巻)』(2015年/菅聖子共著/汐文社)